vendredi, novembre 05, 2004

       

星のない夜

 街道に出たところにある交番前に、前後左右に大きなごみ袋をぶら下げた自転車が置いてあった。袋のなかには、大量の空き缶がいっぱいに詰め込まれていた。交番内には、汚れた上着をコートを着た無精ひげの男が座らされており、警察官が何か話しかけているところであった。
 そうか、明日の朝は、この辺では空き缶の回収があるのだ。窃盗の疑いをかけられているのだな。資源ごみを集積所から勝手に持ち出すと、盗みになるのだったっけ。
 その夜は曇天であって、晩秋であるが冷え込みは厳しくはなかった。毎晩のように目標にしていたオリオン座は見えなかったのだ。東京の夜空は星が少ない所為で、かえって星座を見つけるのが簡単なのである。ただし、代表的なものだけなのだが。
 星のない夜に、あの男は資源ごみの窃盗の嫌疑がかけられた。自分はといえば、星がないために方向を失った。それでも同じ場所へとむかうことはできる。しかし、星に導かれる確信は得られないのである。

 

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