dimanche, septembre 12, 2004

       

大学病院

 その大学病院は、丘の上に立っていて、えらそうに下のほうのごちゃごちゃした街を見下ろしている。私はその巨大な病棟の一室から、隣のぼろぼろの建物の屋上の端っこに、鳩が一羽とまっているのを眺めたりしていた。日がこんなところでも暮れてしまうのは、何度も見た景色だからまだいいとしても、消灯を告げる事務的な放送が聞こえてくるのがとても嫌であった。
 静かにその病室を辞する時を待ちながら、数々の点滴のチューブの中を、薬液が点々と落ちていく小さな音を感じていた。廊下を進んでいくと、エレベータホールの非常口を知らせる緑色の灯りがあたりを照らし、そこですうっと息をしてみる。振り返ると、これまで歩いてきた廊下の床の、冷ややかな質感にぞっとした。

 

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