lundi, septembre 27, 2004

       

秋風リヴァー 2

 古い橋の細い歩道を歩いて渡っていると、平行している鉄橋を轟音をたてて赤い電車が追い抜いていく。その下には、堤防の外側の氾濫原が広がっている。すすきの穂が風に揺れているし、名前のわからない低木がざわめいている。
 向こう岸にはなかなか着かない。もともと私たちが住む此岸からは生きたまま対岸へは渡れないのだ。
「渡れない、渡れない」
 そういう呪文を唱えて、左右交互に前へ出される自分のつま先が、もはや自分のものではない感覚に襲われながらぼくは延々と歩き続けた。

 

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