lundi, mars 21, 2005

       

やなかの墓地にて

 日暮里駅の上に架かる細い歩道橋を、自転車を押して渡った。行き交う電車の声から遠ざかっていくと、谷中の墓地の桜は、夜になるとあの世の栄養分を吸い上げて、なおさら妖しく私の上に降りかかった。私の行く手を阻むものは何もなかった。春の夜、自転車のペダルをいっそう強く踏み込んだ。やがて湿った夜風が私の身体を舐めるように撫で始める。上着の袖に、みるみる水滴が付着していく。

 私が待っていたのは、この雨だったのだ。すべてのうれいを洗い流すかもしれない、この雨であったのだ。

 墓石の影に、小さな猫の眼が光っていた。

 

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