lundi, novembre 21, 2005

       

駅の西

 その駅の改札のある跨線橋の階段を下ると、バス溜まりの小さなロータリーがあった。そのロータリーの向こうには延々と続く鉄板の塀があり、柵の隙間からはマンションの建設を待つ荒涼とした地面が覗いていた。パチンコ屋の音楽が漏れ聞こえ、北風がいよいよ強い。

 ここへ来たのは今夜がはじめてであった彼女は、それにもかかわらず自然と駅の西へ延びる道を歩き始めた。あちらのほうへ行くと、どうしても会わねばならぬ男のアパートがある。その二階の窓には一灯だけの電球が灯っているのが見え、暗い荒地だらけの丘に、風に耐えて彼女を呼んでいるはずだったのだ。

 

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